1.技術者教育プログラム認定の目的

JABEEの主要な活動は、高等教育機関で行なわれている教育活動の品質が満足すべきレベルにあること、また、その教育成果が技術者として活動するために必要な最低限度の知識や能力(Minimum Requirement)の養成に成功していることを認定することである。

JABEEの活動は教育機関に一定のカリキュラムや達成度を押し付けたり、教育機関の教育レベルを調べて順位付けし公表したりするものではない、むしろ、文部省の大学設置基準の大綱化に従い、各大学の個性を伸ばすことを目的としている。各教育機関に独自の教育理念と教育目標の公開を要請し、新しい教育プログラムや教育手法の開発を促進し、日本や世界で必要とされる多様な能力を持つ技術者の育成を支援するものである。

2.日本技術者教育認定制度の求めるもの

JABEEは前節で紹介した理念を実現するために、各高等教育機関に次のような活動を求めている。

  1. 大学や教育プログラムは、社会のニーズに一致する使命と目的を明示しなければならない。
  2. 教育プログラムは、使命と目的に沿う具体的な教育目標を定義し、教育活動の成果がこれらの教育目標と日本技術者教育認定制度が求める教育成果を如何に満たしているかを示さなければならない。
  3. 教育プログラムを継続的に改善する仕組みを持たなければならない。

    a)学生や就職先企業など顧客層のニーズを取り入れる方法

    b)教育活動を観察して教育成果を測定し分析する方法 (Assessment)

    c)教育プログラムが教育目標を達成しているか否かを判断する方法 (Evaluation)

    d)効果的な自己点検・教育改善システム(組織と活動)

  4. 入学学生の質、教員、設備、大学のサポート、財務などの諸問題を教育プログラムの目標と結びつけて十分検討してあること。

これらの項目は、教育機関が、整然とした教育目標と教育戦略を持ち、必要な水準の教育活動を維持し継続的に改善していくために、人的資源や設備が組織的にも財政的にも充分であることを要求している。

3.JABEEの認定基準は、他の評価基準(機関評価)と何が異なるのか?

JABEEの認定基準と既存の大学評価機関の審査基準に対する考え方には大きな相違がある。既存の代表的な外部評価には「大学設置・学校法人審議会による設置審査」、「視学委員による不定期監査」、「大学基準協会による加入審査」などがあるが、それらの審査基準とJABEEの認定基準との考え方の違いを表1に示す。

表1 機関評価の基準とJABEEの認定基準との比較
教育機関の活動 機関評価 JABEE認定基準
(教育プログラム認定)
求める活動 Inspection Quality Improvement
評価の視点 何をするのか? 今行なっていることは目的とする学習成果の達成に結び付くのか?
教育活動の立場 教育活動そのものが評価対象 教育活動は
教育成果を達成するための手段
評価対象 入力 (カリキュラム、教員、設備) 教育成果(Outcomes
Outcomesの役割 定義なし 教育成果は
教育活動を改善するための情報源
点検・評価活動の目的 外部の審査基準を満たすための活動 評価を教育プログラムへフィードバックし、
質的改善を図るための活動

従来の外部評価機関による評価は「機関評価」であり、教育活動に持ち込む資源(カリキュラム、教員、設備)が評価対象となる。教育プログラムとしての活動の評価、つまり教育成果の評価は実施されず、入力が良ければ出力(教育成果)も良い筈だという仮定の下に審査がなされる。したがって、審査の基本は、教育活動に入力される資源の質と個数を数え上げることになる。また、外部評価機関が大学に求める自己点検・評価活動は外部評価機関が定めた審査基準に基づく点検活動(Inspection)であり、評価は審査基準の満足度によってなされる。

これに対し、JABEEが実施する審査は教育プログラムの評価であり、評価対象は4年間の教育プログラムが達成する教育成果(Educational Outcomes)である。JABEEは大学の提示する教育目標がJABEEの要求する教育成果を含み、国際的なMinimum Requirements を満たす内容であることをチェックする*[1]。また、自己点検書や訪問調査から、教育成果が教育プログラムの提示する教育目標を必要な水準で満足していることを確認する。機関認定と異なり教育活動に持ち込まれる資源(カリキュラム、教員、設備)や用いる教育手法は大学の独自性に任されており、革新的な教育手法やカリキュラムが生れる環境を準備している。

JABEEの認定審査のもう一つの重要な観点は、教育目標の達成を維持し教育手法を改善するため、継続的な教育改善活動が実施されており、その仕組みが十分に機能しているかどうかという点にある。自己点検・評価活動が常に実施されており、その結果が教育プロセスの改善に反映されていなければならない。教育成果は自己点検・評価のための基礎データとして用いることができ、プログラムの欠点や改善すべき点を特定できる。教育機関は評価結果からつぎの教育サイクルで改善すべき点を決定できる。従って、JABEEによる技術者教育プログラムの認定審査は、主に次のような観点からなされる。

JABEEによる認定業務の焦点

(a)教育活動の成果(Educational Outcomes)

教育機関が掲げる独自の目標が達成されていること
基準1および分野別要件が掲げる教育目標が達成されていること

(b)教育活動の有効性(Educational Effectiveness)

教育プロセスの有効性
教育手法の有効性

(c)教育活動の品質(Educational Quality)

厳密な成績評価
個々の学生に対するケア
効果的な点検・評価・改善システム
効果的な Faculty Development システム
etc.

4.技術者教育プログラムの審査項目

JABEEによる技術者教育プログラムの認定審査は、下記の項目を含む自己点検書の評価と実地審査によってなされる。

  1. 学習・教育目標(基準1および分野別要件で要求される知識・能力)
  2. 学習・教育の量
  3. 教育手段

    -入学者選抜方法(目的・目標を達成するために必要な資質を持った学生を入学させる方法、編入生の既修得単位に対する互換性評価法)

    -教育方法(学習・教育目標との対応、科目の位置付け、教育方法、成績の評価方法)

    -教育組織(目標を達成するために必要な教員数、教員の質的向上を図る仕組み、教員の教育活動に関する評価法、教員のコラボレーションネットワーク組織)

  4. 教育環境(施設・設備、財源、勉学への支援体制)
  5. 学習・教育目標達成度の評価と証明(目標達成度の評価基準とそれに基づく評価、総合的な達成度評価、厳密な成績管理)
  6. 教育改善(自己点検システム、教育手法や教育環境の改善活動)

*[1]取り扱う教育主題やその主題に対する学習目標のレベルは、当該教育プログラムの教育目標によって異なることに注意すること

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