JABEEの更なる発展を目指して

JABEE会長 木村 孟(きむら つとむ)

写真:JABEE会長 木村孟(きむらつとむ)

2009年6月より大橋秀雄前会長の後を受け会長を務めることになりました。

JABEE発足から早くも10年が経ちました。私も発足にある程度関与致しましたが、「よくここまで来たな」というのが正直な感想です。発足前、 JABEEの創立に関わった方々がその必要性を真摯に訴え続けられましたが、時期尚早ではないかという声もかなりあったのは事実であります。国際的に見れ ば、一刻も早く立ち上げなければならない状況にあったことは間違いなく、そのような考えをお持ちの方々のひとかたならぬご努力によって、1999年11月 にそのスタートを切りました。それを、先頭に立って引っ張られた吉川弘之初代会長、大橋秀雄前会長をはじめとする方々の先見性と熱意にこの場をお借りして 心からの敬意を表する次第です。

JABEEは、2005年にはワシントン協定(Washington Accord)に正式加盟が認められ、国際的にもその存在を確固たるものにしました。2001年度の認定開始以来2008年度までの8年間に、158教育 機関の409プログラムを認定し、認定プログラムの修了生は95,000人の多くを数えています。今後とも、認定プログラムの数は増加していくものと考え ますが、関係者が残念に思う問題の一つは、歴史のある伝統的な大学の認定申請が少ないことです。米国の場合、ABET(*)の「 米国の技術者教育の質だけを視野に入れているのではない。世界の技術者教育のレベルを引き上げるために努力をしているのだ」という基本理念を支持し、ABET創立当初からMITをはじめとする伝統校が申請をし、 認定されています。 しかしながら、最近、米国では各専門分野の認定制度も含めて現在の認定制度そのものに関する批判が各方面から寄せられており、今後米国の認定あるいは評価制度そのものが、大きく転換する可能性があります。我々としては、その動向を注意深く見守る必要がありそうです。
技術者教育は国の消長を決すると言っても過言ではないと思います。世界銀行はインド政府の要請を受けて、技術者教育のレベルアップのため、ここ10年間 で1,000億円を投資しようとしています。技術者教育については日本の経験から学ぼうということで、私はそのフィージビリティ・スタディへの参加を要請 され ました。日本の技術者教育は世界的に見ても高いプレゼンスがあります。日本の技術者教育が様々な問題を抱えていることも事実ですが、日本が世界第二の工業 国としての現在の地位を築くにあたって、技術者教育が果たした役割は極めて大きいといっても過言ではありません。我が国が真の知識基盤社会を形成するため には、技術者教育の更なる進化が必須であります。JABEEはそれを大きな目標として絶え間ない改善を重ねてきました。歴史のある伝統的な大学の先生方と 産業界の方々には、そのことをご理解いただき特段のご協力をお願いしたいと存じます。

一方、大学機関別認証評価が始まって5年が経ちました。機関別認証評価は、1998年の大学審議会の答申のサブタイトル「競争的環境の中で個性輝く大学 の育成」を目指して始まったものですが、機関評価であるため、我が国の大学の全体的な質の向上には寄与しているものの、競争的環境の醸成という点では必ず しも有効な手段ではありません。英国の例に見るごとく、競争的環境を醸成するには、分野別評価の実施が必須であります。この考え方は、中教審でも多くの委 員によって表明されていますので、早晩、何らかの形で、分野別評価が始められると予想されます。工学分野については、これが出来るのはJABEEしかな く、今後この点を視野に入れてJABEEの更なる発展を目指します。なお、JABEEは2010年度から産業技術系専門職大学院の認証評価を行うために、 現在、文部科学省に対し認証評価機関となるための申請を行っており、このことはJABEEの更なるステップアップにつながるものと考えております。

(*)ABET :Accreditation Board for Engineering and Technology
(米国における非政府組織の技術者教育認定機関)